「オー・ブラザー!」
 
あらすじ
 1930年代、アメリカ南部のミシシッピー州。
 脱獄したエヴェレット、ビート、デルマーの3人組は
 昔エヴェレットが銀行強盗で得た120万ドルの隠し場所を目指して旅に出た。
 ダム建設で金を埋めた場所が水の底に沈むまで時間が無く、
 その上お金も無い彼らは、ラジオ局で歌を歌って僅かなお金を得るが……
 コーエン兄弟がジョージ・クルーニー主演で描く痛快珍道中コメディ。

キャッチコピー
  だから人生はおもしろい

感想
  この映画、酷評する人は決まって「コーエン兄弟なのに」と言う。
  コーエン兄弟監督作品に始めて触れた私にとって、
  そんな期待も何も無いので普通に脱獄囚3人組の珍道中を楽しめました。
  旅を続ける彼らに次々と現れる変な人たちの話は、
  それぞれが確立していて短編作品のように感じるほど個性が強烈。
  そんなことよりこの映画を私が気に入ったのは音楽と風景。
  アメリカ南部ののどかな風景と、
  その広大な地が生んだカントリーやブルースなどの音楽。
  物語のキーを握る曲を始め、劇中ではやたらと音楽が用いられる。
  どれもこれも風景と物語にマッチしていて、見ていてとても心地よかった。
  安っぽい言葉だが、敢えて言うならヒーリング・ムービーか。


印象に残ったセリフ
  「黒人がいても構わんさ!」
  大人気歌手「ずぶ濡れブラザーズ」が黒人だと知って戸惑う息子に。
  良い歌なら誰が歌っててもいいじゃない、なんて
  1930年代当時思えるほどの良い曲とは、音楽って凄いね。

オススメ度
  ★★★★☆ 「やられた!」と言いたい人は是非。

教訓
  珍道中物語なら、変なイベントをいかにバランスよく配置するかが大事。

ネタバレ感想文   下の部分を反転させてください

  分類するなら「痛快コメディ」なんだけど、
  笑えると言っても、その笑いは声を出して笑うというものではなく、
  おもわずニヤリと口元が緩んでしまう種類のモノ。
  この映画もコメディ作品にありがちの「作品の笑いが肌に合えばアリ」で、
  電車から落ちてしまうシーンやカエルを抱きしめて泣くシーンなどがそれ。
  「大笑いができないと許せない」「いつもの監督の味が出ていない」と
  言っても、この映画を一蹴しできないのはやはり映画に漂う雰囲気のせい。
  音楽と風景がアメリカ南部に行ったことも無い私に
  ノスタルジックな気分を味あわせてくれるのはやはり凄い。
  「ずぶ濡れブラザーズ」が大盛り上がりの観客の前で
  楽しげに歌うシーンは私も楽しくなったし、
  ラストに登場するヒモで繋がれた娘たちが囚人のそれを思わせて
  またニヤリとさせられたし、線路を行く老人の後姿もまたやられた。
  CGを前面に出して爆発ドーン、拳銃ダダーンの映画よりも
  こういうゆったりとした映画が好きな私にはかなり肌に合った映画でした。


 
MANGA WALKER vol.193 より