第40回「小学生の遠足作文」
小学校2年生の頃、遠足の感想を書く作文で、
バスに乗る描写までに原稿用紙15枚を使い果たしたという文豪がいました。
その文豪の名前は忘れてしまいましたが、確か男子で、
内容は遠足作文の範疇を大きく逸脱した壮大な物語でした。
遠足前日、持って行くものをリュックに詰め込む描写から始まり、
布団に潜り込んでも興奮してなかなか寝付けなかった話、見た夢の話、
明けて翌日、朝ごはんの献立、食べた順番、食卓での両親との会話、歯磨き、
家を出発、集合場所へ着くまでに出会った友達との会話……などなど。
普通の生徒は「あれが楽しかった」といった遠足の感想を書いていましたが、
彼は翌日に控えた遠足に心躍らせる少年の心理をリアルかつ緻密に描き、
それまでの「遠足作文」の概念を見事に打ち砕いたのです。
しかし提出期限までに完成することができず、先生には大目玉を喰らい、
主人公である彼が、遠足の目的地に降り立ったところで作文は終了。
作文の中の彼は今も真鶴サボテンランドのバス専用駐車場にいます。
vol.040
1月28日号 228部
前半部分をごっそり切って掲載しました。
さっぱりしたなぁ。