第20回「整形美人」

 もしも最近衰え始めている私の記憶が確かならば、
 この言葉を世間に送り出し認知させたのは某ドラマだったと思う。
 整形美人。
 まぁ整形したのに美人じゃない女性はいないわな。
 もしいたらそれは訴訟もんだし。

 で、今回は別に整形が悪いかどうかの話をしたいじゃないんです。
 実に都合の良い言葉だと思ったんですよ。

 整形という世間的にマイナスイメージな単語に、
 美人というプラスなイメージの単語をくっつけた言葉。
 これで元々の整形の持つマイナスイメージを少し拭った感じがします。
 そして世間的に整形の地位がちょっと向上したような感じもします。

 ある物事を指す言葉が作られ、使われているということは、
 この世でその物事の存在が認められたということです。
 つまり例に挙げると、
 我々は台風という存在を認めているから台風という名称があるってことです。
 逆に台風をまったく知らない地域の人々は
 「台風」という言語を持っていない可能性があります。
 言葉の範囲が認知の限度、と言った社会学者もいました。

 だから「整形美人」という言葉が日本にあるってことは、
 「整形して美人になった人」の存在を世間は認められているってことです。

 ……というような事を整形した女性に吹き込んで
 テレビ出演させているのが「笑っていいとも」じゃないでしょうか。
 この番組には「5人のうち整形したの誰?」というコーナーがあります。
 昔だったら整形は他人に知られたくないのが当たり前で、
 テレビでわざわざ「私は鼻と目を整形しました」なんていうヤツはいない。
 でも「整形美人」という言葉が誕生したおかげで、
 整形した女性がテレビにホイホイ出演するようになったのです。
 実に「笑っていいとも」にとって都合のいい言葉が生まれてくれました。

 別に深いことは考えずに意気揚々とテレビに出演した整形美人。
 その整形美人の顔を、周囲の人間はどんな顔をして覗き込むのでしょうか。

 

vol.020 12月6日号 199部

この頃は日本語ブームと言うか言語ブームで
ちょっと言語学にかぶれていたと思います