第18回「シャーペン解放運動」

 前号で掲載した「シャーペン禁止令」の話に
 実はこのメルマガで珍しく読者さんからメールや書き込みがありまして。
 その中でひとつ、コアラさんからいただいたメールを紹介します。
 
 > 私も幼いながらに何でなのかは全く理解できませんでした。
 > しかも私の小学校は
 > 学校全体の校則でシャーペン禁止令が出ていたわけです。
 > 不良や非行に走る子供がいない田舎の小学校だったので
 > みんなバカみたいに従っていました。
 > しかし「シャーペンを使えるようにすることを約束します!」ということで
 > ある男の子が生徒会選挙に立候補したのです!
 > それはそれは全校生徒の神様のような存在でしたので
 > 今までにない圧倒的な差で当選。
 > しかし私の記憶では、使えるようになった覚えはありません。
 > まぁ、まんまとだまされましたね。
 > その時も生徒会長がダメだった理由を言っていた気がしますが
 > はっきりと覚えてないので、
 > それもきっと理解できないような理由だったのでしょう。

 まさかシャーペン解放運動を公約とした生徒会長候補がいたとは。
 その生徒会長は公約を守れなかったみたいですが、なかなかの策士ですね。
 掲げた公約がちょっと実現可能っぽい辺りが上手い。
 そういえば私が卒業した小学校の生徒会長選挙で
 ちゃんとした公約を掲げた立候補者なんていませんでしたよ。
 クラスの委員長選挙で「蛇口からジュースが出るようにする」なんて
 「消費税撤廃」と同じくらい実現不可能な公約を掲げたヤツはいましたけど。

 もし私の所属した4年1組でも同じような先導者がいたら
 37人の級友によるシャーペン解放運動は勃発したかもしれません。
 「ペンは剣よりも強し」なんて言いながらシャーペンを片手に
 シャーペン使用を認めるまで先生の全身をチクチク突いたりして。
 まぁ実際にそんなことをしたら
 余計にシャーペン弾圧運動が盛んになるでしょうけど。

 コアラさんは「落ちたシャーペンの芯を踏んだら床が汚れる」という理由で
 シャーペン禁止令が発動されていたそうです。
 でもそれだったら鉛筆だって同じようなことが起こり得ますしねぇ。
 他にも色々考えてみたんですが、納得いく理由が思いつきませんでした。

 そこで母にこの疑問について尋ねてみると、あっさり答えてくれました。 
 「シャーペンの芯だと簡単に人を刺せるからでしょ」
 鉛筆も刺さらないことはありませんが、シャーペンの方が断然鋭い。
 確かに小学校低学年の児童が扱うには少し鋭い筆記用具かもしれません。
 しかし母のこの説は小さい子供にシャーペンを使わせない理由で、
 私が禁止令に縛られていた小学4年生には通用する説ではありません。

 しかし「今までの中では一番有力な説だなぁ」なんて
 尊敬のまなざしで母を眺めていたら、ふと母の腕に目線が行きました。
 そこで気づきました、どうして母がそんな有力な説を提唱できたのか。
 
 母の腕にはホクロではない小さな黒い点がありました。
 その黒い点は、肌の奥の方に何かが刺さっているような感じでした。

 

vol.018 12月2日号 195部

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