第4回「正しいボンドの使い道」
小学校3年か4年の頃、私のクラスで木工用ボンドが流行った。
いきなりこんなことを言っても意味がわからないと思いますが、
文字通り、木工用ボンドがクラスで流行し、全員机の中に入れていました。
でも別にそのボンドで何かを修復するわけではありません。
無駄に透明のプラスチックの下敷きに塗って乾かすだけです。
うすく塗れば数時間で、クレープの生地のようにボンドは乾き、
厚みを持たせてべったり塗れば1日で、お好み焼きの生地のようになります。
ボンドは乾くと透明になるので、それを爪でペリペリとはがす。
それだけです。
しかしそのシンプルなだけの乾きボンドでは飽き足らず、
はがしたボンドにペンでイラストや文字などを書いたり、
乾く前に細かく切ったカラー消しゴムを混ぜたりする新鋭芸術も開発され、
ボンドブームはますます加速しました。
その後、下敷きだけでなく、机にも塗る人が増えてきました。
しかしいくらボンド芸術に熱中しようとも、学生の本分は勉学。
ボンドを塗るだけ塗って、授業中はボーっとしているわけにはいきません。
だから机の端に邪魔にならない程度、できるだけ大きく塗るのですが、
それでも教科書やノートが乾く前のボンドに当たり、勉強道具がベタベタに。
こうして進化に進化を重ねたボンドブームは、
「単にボンドを乾かしてそれを眺める」というものから
「誰が一番面積の広い乾いたボンドを作れるか」の競争に。
下敷きに塗る者は全面に、机に塗る者はその半分をボンドで埋めました。
「オレの方がでかい」「私の方が」「いや僕だって」「何よ私だって」と
新記録を目指す彼らの中で、遂に机全面にボンドを塗ったバカがいました。
それも他人の机に。
昼休みにこっそり塗ったボンドがやや乾き、半透明になったその時、
クラスのある男子がその机の上に座ってしまいました。
彼は悲鳴を上げて「誰の仕業だ!」と怒鳴りましたが、犯人は名乗り出ず。
ズボンを体育服に着替えて、半べそのまま午後の授業を受けました。
この「ボンドがズボンにベッチョリ事件」が原因で
ボンドブームは強制的に打ち切られることになってしまいました。
他人の机にボンドを塗るなどという非常識な行為を
いったい誰がしたのでしょうか。
私がただひとつ言える言葉は、「澤田君、ごめんなさい」の一言です。
vol.004
10月27日号 178部
小学校のときの色々なブームは今後も書きたいです